2007年11月7日
ベンチャー企業社長が贈る「成功への目標設定セミナー」
1.なぜセミナーを行うのか?
以前までは会社説明会を人事が行っていたが、集まる学生にピンと来なかった。そこで、4年前から実際に自分で説明会を行ってみて、大学生が社会に出る上での目標設定を出来ておらず、危機感も持っていない事を感じた。このような企業が求める人材と学生のギャップを埋める為、2年ほど前から会社説明会を兼ねて目標設定セミナーをはじめた。もっと早く聞きたかったという参加者の声から、今年は、時期を半年ほど早めて、会社説明とは別に、ボランティアで目標設定セミナーを行っている。
2.学生と企業の本音
学生団体や内定者を通じて学生の生の声をまとめ、人材コンサル会社の経営者や採用担当を通じて企業の本音をまとめた
1)学生の本音
働きたくない、社会人としての自覚や責任を持ちたくない、楽しく稼ぎたい、転勤は嫌だ、一生懸命は格好悪い、組織の中に埋没する事が不安、夢が見つからない、やりたい事が見つからない、自分の目標に自信がない、家庭と仕事の両立が心配、就活をしてみて自分の就ける仕事が少ない事に驚きを覚えた、職場での人間関係が不安、どの企業がいいのか見分けられない。
2)企業の本音
学生の実力格差が開いている。特に大企業に関係あるが、当然学歴は採用に関係あるし、一流大学しかいらない。一方で、一流大学は取るが、出世は保証しない。偏差値と頭の良さが違う。学生のプライドが高いが、能力がないし、仕事をやらせても出来ない。何をしたいかわからないまま大学を出る学生が多い。学生は仕事についても会社についても何もわかっていない。女の子は可愛いく、愛相が良ければ有利。中途採用でも優秀ならば採用。
3)進路を決めるにあたって
企業の本音は色々あるが、その中でも企業に左右されずに、自分の価値観を持って生きる事、自分自身の目標を立てる事が重要である。人生の目的や幸せは、お金だけではない。例えば、一部上場企業の社長でも幸せそうな人は極僅かであるし、大手企業に勤めたからと言って幸せになれるとは限らない。逆に収入は僅かであっても、幸せな人は多い。
4.社長の過去から学ぶ、成功への秘訣
1)浪人時代
受験に二度失敗して、二浪だったときに、周りの友人が皆、仕事の目標を持って大学に入っているのに対して、自分はただ大学に入るという目標しかないことに気付き、完全に落ちこぼれた。そこで、多くの年長者の話を聞き、本を読み、気づいた事は、「大学は仕事を有利にする為に行く所であり、ただ入れば良いというものではない」ということであった。そこから、高卒で二浪の自分に出来る事を必死に考えた。霞ヶ関のトップや地方公務員のトップ、大企業の役員という道はすでに無く、専門職に就く事は難しく、残された道は中小企業に入るか経営者になるかしかなかった。だったら経営者になるよ!と思い、営業でTOPになってマネジメントを行う事を決意した。
→目標設定!
2)営業時代
高卒でも入れる中小企業に入社し、『できる人に話を聞き、真似る』をモットーに働き始めた。先輩のアドバイスに従い、鏡に向かっての営業練習やテープに取っての確認、と毎日訓練を重ねた。それでも最初は全く売れなかった。それでも売るコツは売れている先輩の真似をすることだという先輩の助言を素直に実行してサボらず毎日訓練をした。ようやく、営業三ヶ月目に初契約を取りつけた。その後順調に成績を上げ、21歳で年収3000万円に達した。しかし、二回は買われないレジャー会員権を売るよりも、リピートオーダーの商売をしたいと思い、「汚れる商売は廃れない」という先輩の助言を受けて ハウスクリーニング事業を行う事を決意した。→話を聞く!考える!真似る!
3)起業後
創業開始後は自ら営業を行い、毎日4時起きで23時まで働き、時間を投資して収益をあげ、社員を増やし会社を成長させた。その後、アメリカに留学して、多くの先輩経営者が、欧米からシステムを輸入している事にカルチャーショックを覚え、ハウスクリーニング事業にフランチャイズを導入した。事業が拡大し、一時は店頭公開を目指していたが、店頭公開企業を見てもどうもハッピーでない経営者が多く、公開企業の中でビリになっても幸せにはなれないと考え、公開は行わない事にした。現在は、若者に早く目標を持つ事の重要性に気付いてもらう事が、社会への恩返しであると考え、学生へのセミナー、経営者育成などに取り組み、様々なボランティア活動を行っている。
→頭と時間を使う!
5.学生へのメッセージ
職種は、営業、技術、事務のどれかに大別される。この内のどれかで、力を付けておかなければ、生きていけない。学生時代には皆が同じであっても、社会に出れば格差は広がって行くものだ。また、転職は、ステップアップの為には良いが、履歴に傷が付く転職はすべきではなく、転職を続けるうちに年収が下がってしまう可能性が高い。企業が転職の際に会社が採用するのは、仕事をきちんと出来る人、実績や力を付けている人であるからだ。成功する為には、自分の価値観を持ち目標を持って進む事が重要である。なんとなく生きていても、何も出来ずに終わってしまう。「いつまでに何をする」という事を決めて、どうやるか、は後から考えていくべきである。
6.テーマへの返答
学生への事前アンケートで人気の高かった項目についてお話頂きました。
1)時間と頭の使い方
会社に内定、入社して重要なことがいくつかある。
・内定期間中に、会社の事、商品の事、商品の歴史、などの知識を得る。
・内定を受けた会社の上司、人事などと交流し、気に入られる。入社3ヶ月以内に上司に嫌われない。
・始めの3年間は休まずに働く事。他人が休んでいる間に働けば、必ず勝てる。
以上のような努力をすべきだが、お金と頭を使うのは、20代ですべき。年を取ったら、誰も投資してくれないし、効率良く生きるべきである。
2)年長者に人脈が無い人は成長しない。
成功している人は、みな年長者に引き上げてもらっている。年上でかつ、情報を持っている人、つまり、目標を持って前向きに仕事をしている人と知り会う機会を得る事が重要である。人脈を作るには、
・本を読み、感銘を受けた場合に著者に会いに行く。
・勉強会に出たら、参加者よりも講師と仲良くなる。
・御礼を書き、電話をし、覚えて貰い、気に入られる。
・「こういう話を聞きたい」という風に頼んで、他の人を紹介して貰う。
情報=人脈であり、人脈を維持する為には、御礼や挨拶の葉書を書くのが一番である。
3)大企業と中小企業のメリット、デメリット
大企業のメリットは、偏差値が高い人は買って貰えるし、チャンスをくれる事。時間はかかるが大きなチャンスを貰える。デメリットはチャンスをもらえるまでに時間がかかること。10年横一線。そして、優秀な人材が多いので勝ち残るのも大変。中小企業では、偏差値は重要ではない。規模は小さいが、入社して数年で責任を持たせてもらえ、チャンスが早く貰える。但し、そのチャンスはそれほど大きいものではないかもしれない。デメリットとしては、同族企業で、血縁で運営をしている場合、上にのぼる事が困難な場合がある事である。
4)会社で負け組になる人になる人の共通点
コミュニケーション能力のない人。挨拶、報告のできない人。これができない人は、周囲の協力が得られず、.上司にも可愛がられない。コミュニケーション能力があれば、周りに引き立てられ、昇進する事ができる。特に気をつけなければならないのが、上司にだけは嫌われてはいけない。上司の悪口を言えば、必ず伝わるので、仲の良い人にでも、絶対に上司の悪口を言ってはいけない。人の悪いところを見るのではなく、人の良いところだけを見て付き合うこと。そしてそこを真似ること。
7.その他、質疑応答
1)なぜ留学し、何を得たか?
留学したのは、新聞などに取り上げられて人脈を築いていく中で、他の先輩経営者が欧米のシステムを輸入している事を知り、勉強しに行く必要性を感じた為。実際に留学し、ニュービジネス、フランチャイズ、エコビジネスなどについて調査を行い、想像以上に日本が様々なシステムを欧米から取り入れている事にカルチャーショックを受けた。また、海外に行き、日本人である事を強く意識し、歴史を学び直すなどした。留学で苦労した事は、外国人との交渉であり、Yes、Noを明確に伝えるなどの交渉術を学んだ。
2)チャンスのつかみ方
チャンスは買うものであり、リスクになるかもしれないが、買わなければチャンスは得られない。チャンスを得るには、お金が無ければ、必死に頭を使い、体を使わなければいけない。チャンスはどのような人に与えられるか?それは、一生懸命努力する人、頭と時間を使う人である。長時間の労働自体が重要なのではないが、時間を投資する事でチャンスを得る事は出来る。例えば、上司は、入社後の3か月を見ている。結果が出るか否かに関わらず、どれだけ時間の投資をしているかどうかで評価されるのだ。
3)情報の入手の仕方
情報の定義は、人である。チャンスは、インターネットでも本でもなく、人が与えてくれる物である。情報を与えてくれる人が人脈であり、情報を与えてくれるのは、同級生でも後輩でもなく、自分よりもずっと年上の人である。同級生や後輩に8割も時間を使っている人はチャンスに巡り合えない。年長者に人脈を作ることが必須。
4)悔やんでいる事は何か?
過去を振り返ると悔やまれる事は沢山ある。しかし、それらの失敗は重くない。なぜなら、反省や分析はするが、それは未来における前進に繋がっているからである。キャリアというのは、失敗の分析をし、その失敗を二度と繰り返さない事である。失敗の多くは、心理的なものである。そのため、論語、歴史など学び、人間的に豊かになる事が重要である。成功している人は、失敗を絶対にくりかえさない。二度同じ失敗をしたら、人生で負ける。人の話を聞き、自分は同じ失敗をしないようにすべきである。
5)学生時代に行うべき事
大学1、2年の頃から、様々な勉強会に参加し、社会人の話を聞き、刺激を受けると良い。こんな人になりたい、と思える人を作ること。また、同級生との付き合いに時間を割き過ぎるべきではない。大学は、同級生の中でしか通じない言葉で話し、4年間だけ生きている狭い世界である。しかし、時間しか投資するものがないのだから、どこにその時間を投資するかは考えるべきである。普段自分の読まない本を読むなど、少しずつ興味を広げていくと良い。
●感想
成功の定義は人によりますが、成功する為に何が重要か、山口社長のように自らの哲学を持ち社会で活躍されている方のお話を伺えたことは大変有意義でした。特に、情報=人である、年長者に話を聞いて真似する事が重要であるというお話は、日々の学生生活の中ではつい意識から外れてしまうことであり、はっとさせられました。10年後、15年後の自分を想像するのは難しい事ですが、目の前のことのみならず、ロングスパンで人生を設計していくことの重要性を再認識しました。経験に基づいた成功への秘訣を伺えて勉強になりました。
文責:東京大学薬学部 中崎康子
講演者:
株式会社トータルサービス
代表取締役 山口恭一氏