2007年2月26日

資生堂座談会議事録



1.御社の社風についてお聞かせください。
「人に優しい」というのが社風です。但し、「優しい」と言う意味は、決して甘いという意味ではありません。

2.リスクをとって、失敗した社員をどう評価しますか。
業績によって半期ごとに評価をしています。勿論、プロセスも評価されます。
自らの積極的なチャレンジについては、その姿勢は評価します。万が一失敗したときは、その経験を次に生かしていくことが大切です。

3.今後の海外展開の戦略についてどのように考えていますか。
戦略として中国や東南アジアなどを中心に強化していくことで、海外売上の割合を現在の3割から当面4割を目標にしています。また、タイにリサーチセンターを設けるなど、積極的に取り組んでいます。

4.TSUBAKIなどの商品をはじめ、広告戦略が注目されていますが、どのような思いが込められているのですか。
TSUBAKIは単に宣伝広告というだけではなく、「Dear woman」というメッセージの通り、日本人女性の黒髪の美しさや日本の女性に生き方の提案をしています。また、その商品をずっと使っていただきたいと考えているため広告のインパクトを狙うだけではなく、商品を使用したときに満足感を感じて欲しいと感じています。そのため、広告戦略も大切なことですが、ものづくりへのこだわりを何よりも大切にしています。

5.お客様に直接商品を提案する立場である美容部員の教育において大切にされていることは何ですか。
おもてなしの心を大切にしています。スキルも勿論ですが、心が重要です。商品が売れるかどうかは、真にお客さまがカウンセリングに満足されていれば、後から結果がついてくるものであると考えています。商品を提供するなかで、お客様に感動を提供したいと考えています。人間は、感動がモチベーションや成長に繋がることが多いです。いつ商品を買いに行っても違う感動がある、お客様に感じて頂けるように心がけています。

6.御社は化粧品のほかにも、パーラーやバリのキラーナ・スパなど、他の分野でも高いクオリティの提供をされていますが、今後の展開についてお聞かせください。
美しい生活文化の創造の提供をしていきたいという考えから化粧品以外の分野も幅広く手掛けています。様々な分野を手がけていますが、コアビジネスの化粧品に注力していきたいと考えています。

7.御社の目指すビジョンはどういったものですか。
会社として3つのビジョンがあります。1つ目に、100%お客さま志向の会社に生まれ変わること。2つ目に、大切な経営資源であるブランドを磨きなおすこと。3つ目に、魅力ある人で組織を埋め尽くすこと。
お客様に対してのコーポレートメッセージは「一瞬も一生も美しく」です。

8.ブランドの数がかなり集約されたように感じていますが、どのような背景から集約されたのですか。
ブランドの磨き直しをするため、かつて100近くあったブランドを集約しています。今まで、化粧品はデパートや化粧品専門店で購入するのが主でしたが、最近は、ドラッグストアや通販など、購入の方法は多様になってきています。また、化粧品に求めるニーズも多様化してきています。しかし、商品だけを対応すれば、売り上げが上がるという単純なものでもありません。また、商品数が多くなってしまったため、一つひとつの商品の特徴を打ち出すことが難しくなりました。もちろん広告費も分散するので、マスに対してアピールする効果も得にくくなっていました。総体的な理由から今後は強くて太いブランドや商品作りを目指し、ブランドを集約することで、ブランド価値をさらに高めようと考えています。

9.御社の美容部員の方の接客を受ける際に、スキンケアを非常に大切にしているという印象を受けますが、スキンケアについてどうお考えですか。
スキンケアは特に大切にしています。以前、「スキンケアハウス資生堂」というスローガンを使用していた時期があります。資生堂の創業は、薬局としてオイデルミンという良い肌を保つための化粧水を扱うところから始まっています。そこから、スキンケアに対するこだわりが生まれました。スキンケアを大切にすることで、よりメーキャップが映えるのです。基礎の美しさこそが大切だと考えています。

10.文系卒の新入社員は、まず営業を経験されるそうですが、営業を重要視する背景についてお聞かせ下さい。
当社には、「店頭基点」という考え方があります。やはり基本的にBtoCの世界なので、企画をやるにしても、人事をやるにしても、コンセプトなどを作る際には現場のお店の状況を知っていることが重要となります。そのため、営業として、お店がどうなっているのかを知る経験が大切であると考えています。

11.女性の方が働きやすい環境は整っていますか。
育児休暇、育児のための勤務時間の短縮だけではなく社内に託児所を設けるなど、育児を支援する環境は充実しています。育児休暇については90%以上の人が利用しています。また、出産後に辞める社員も少なく、仕事と育児を両立している社員も増えています。

12.海外で仕事をするには、やはり国内でキャリアを積んでからになるのでしょうか。
ある程度国内の仕事の中でキャリアを積んでから海外への仕事をして頂きます。なぜなら企業の文化や理念は経験を通じて身につくものであるからです。20代後半で、海外で活躍している社員もいます。

13.中国においても資生堂のブランドは支持されていますが、今後の中国での展開についてどのようにお考えですか。
中国においての、主な市場はデパート中心であり、これまでは富裕層が対象となっていました。しかし、中国は国土も人口数も多く、これから地方圏は拡大の可能性が大いにあると考えられています。現在、中国では約2000店で資生堂の商品をお取り扱いいただいていますが、中国での成長はまだまだこれからであると考えています。

14.深澤様自身、これまでのお仕事の中でやりがいを感じた仕事があれば教えてください。
最初に営業を7年経験した後、マーケティングを担当しました。その後労働組合の委員長を6年間やり、現在の人事を担当していますが、どの職場でも大きなやりがいを感じています。営業ではチェーンストアを担当していましたが、お店の方に息子のようにかわいがってもらったりするなど、お店の温かさや人間関係の大切さを学びました。 マーケティングでは、美白市場に大きなインパクトを与えた「ホワイテスエッセンス」という商品を担当し、1本1万円の化粧品が180万本売れ、180億の売り上げを達成したときには非常に大きなやりがいを感じました。 どの仕事をしていても、企業はやはり、人が大切だなということを強く感じ、今の人事の仕事においても、その想いを大切にしています。

15.学生の頃からやっておいた方が良いことがありましたら、教えてください。
沢山のことを知ることも大切ですが、1つのことをやり遂げることがより大切であると考えています。これからは指示を待つのではなく、自立性が求められます。1つのことをやり遂げる中でPDCAのサイクルを経験していれば、その経験はビジネスの中でも役立ちます。行動力、粘り強さ、一生懸命さというものは会社に入っても自信となるはずです。そして仕事を通してもさらに成長することができるでしょう。最近は、3年で会社を辞める方が多いと言われていますが、自社の入社3年目までの離職率は2%弱です。本日付のAERAの「3年で辞めさせない企業」の特集の中で紹介されています。ですが、私たちはそれでも離職率がまだまだ高いと考えています。会社は3年では分かりません。もちろん私たちもあらゆる努力を行い、基礎作りの支援をし、社員を大切にしていきます。

16.求める人材像についてお聞かせください。
資生堂には135年の伝統があります。現在のわが社の傾向としては、素直さ、謙虚さ、チームワークを重要視する人物が多いように思います。今後は、変革力、チャレンジ精神が必要です。最近の学生は頭も良く、やりたいこともはっきりしている方が多いですが、やはりどんな人でも最初は新入社員からのスタートです。新入社員の第一歩として、営業が大切ですし、その中でもやはり、人間としての信頼感、人間性といったような心の部分が重要になると考えています。






■ 参加者:
株式会社資生堂 人事部 人材育成グループリーダー 深澤 晶久氏
株式会社資生堂 R&D企画部 参事 尾郷 正志氏
CLEVER経営研究会 会長 斉藤 丈真
東京大学大学院 岩瀬 史朗
東京工業大学 福栄 晟
東京工業大学 鎌田 直樹
津田塾大学 浅野 有香
武蔵工業大学 藤原 桂子
武蔵工業大学 田窪 優司
LEC大学 野口 真奈美